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●第65回コラムの主張
私は第65回コラムで、私の逮捕当日の家宅捜索で布団袋の中から「発見された」とされたリン止めネジは、中島富士雄氏(道警吏員)がネジの精密測定を実施(8月16日から18日にかけて)し鑑定書を作成(8月21日)した後に、ドライバー溝にドライバー傷が付いている別のネジに、スリ替えられたことを明らかにしました。その根拠として以下のことを主張したのでした。
@証拠になっている766番の「発見リン止めネジ」は、吉村新氏(リズム時計益子工場長)の別の鑑定書(9月13日付け鑑定書)と証言によって、ドライバー溝にドライバー傷(ドライバー痕)がくっきりと3ヶ所に付いています。
Aしかし中島富士雄氏は1審48回公判で「発見ネジ」について、ドライバー痕のようなものはついてない旨を証言していました。そして今回、裁判所の開示勧告によって検察官が開示した8月21日付け中島富士雄鑑定書にも、ドライバー痕があるということは一切書かれていませんでした。
B同様に開示勧告によって今回開示された、吉村新氏の8月26日付け「捜査関係事項照会書に対する回答書」には、ドライバー溝に「ドライバキズあり」と明記されています。
以上で、中島鑑定書(8月21日)の後に、ドライバー痕のついたネジにスル替えられ、その別のネジが「発見ネジ」として吉村新氏に捜査照会されて、吉村氏による8月26日付け「回答書」が作成されたことが明らかです。
ここまではいいのです。次のCが失当でした。
C 同じ「発見ネジ」であれば、寸法が等しくなりますが、中島鑑定書と吉村回答書(8月26日)では次のように異なっています。それをスリ替えのもうひとつの根拠としたのですが、後に書くように失当でした。
・ネジの頭の直径は中島氏3.85ミリ。吉村氏3.890ミリ。
・ネジの長さは中島氏3.3ミリ。吉村氏3.177ミリ。
・ドライバー溝の幅は中島氏0.55ミリ。吉村氏0.60ミリ。
・ネジの軸の直径は中島氏1.88ミリ。吉村氏1.95ミリ。
吉村氏は「回答書」で、リン止めネジの加工法は転造(ヘッダー加工)であるため、1個1個の寸法のバラツキが出るのが特色であると書いていました。それで私は、警察はネジは全て同じだと思い込み、分らないと考えスリ替えた。だけど未開示証拠の開示勧告によって、寸法の違いが判明してしまうことになった、と喜んだのでした。
●「寸法の違い」をスリ替えの根拠にしたのは失当でしたので、お詫びし取り下げます
弁護士とやり取りをしていて、吉村氏の9月13日付け鑑定書にも「発見リン止めネジ」の測定結果を記した表が添付されているけど、これが8月26日付け回答書の数値と微妙に異なっているのです、と指摘を受けたのです。
私の記憶では、9月13日付け鑑定書(1審で証拠採用)には添付資料はなかったのでした。だからこれを参照することなく、第65回コラムは書いたのでした。改めてこの鑑定書をチェックしてみました。やはり添付資料はありませんでした。それで長い本文を読み返してみました。そしたら、測定した「検定検査結果通知表」というものを添付すると書かれてありました。改めて証拠綴りのその前後辺りを探してみたら、有りました!綴り方がまずかったのでした(反省です)。
道警捜査員は8月26日に捜査照会回答書を作成してもらい、一旦「発見ネジ」を持って札幌へ戻ります。そして再び、9月8日付けの鑑定嘱託書と「発見ネジ」を持参して益子工場へ向かい、吉村氏に9月13日付け鑑定書を作ってもらったのでした。
9月13日付け鑑定書の「検査結果通知表」にあった「発見ネジの」測定値を以下に記します。前記の吉村氏8月26日付け「回答書」の測定値と比べてみてください。
・ネジの頭の直径は3.905ミリ。
・ネジの長さは3.250ミリ。
・ドライバー溝の幅は0.564ミリ。
・ネジの軸の直径は1.920ミリ。
このように「発見ネジ」が8月26日と9月13日で測定値が異なっているのでした。ふたつは測定者(吉村氏の部下)が違っていますが、2人とも専門家です。測定値が微妙に違ってくるのは(差は小数点以下2桁のレベルです)、測定器マイクロメーター等の精度の限界もあるでしょうし、ネジが転造(ヘッダー加工)で造られているために、例えばネジの頭も完全な円形にはならず、測る所によって直径が微妙に違っているためでしょう。他の3つの測定箇所の差にも同じことが言えます。
従って、私が中島氏の測定値と吉村氏の8月26日付け「回答書」の測定値が異なっている(差は8月26日と9月13日の差と大差なし)ことをもって、スリ替えの根拠にしたのは失当でした。お詫びし、この部分は取り下げます。
スリ替えの根拠は、ドライバー傷(ドライバー痕)が無かったネジが、有るものになったことです。
2015年3月13日記
大森勝久
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