北海道庁爆破・再審請求裁判(大森勝久)

第78回 弁護士が12月22日再審請求補充書(三)を提出
しました(2016年1月1日記)
弁護士が12月22日再審請求補充書(三)を提出しました
●補充書(三)の章立ては次のようです
 裁判所は以前から「補充書」があれば12月までに提出してほしいと言ってきていました(3月に「決定」を出すつもりなのです)。弁護士は12月22日、補充書(三)を提出しました。章立ては以下のようになっています。

第1 本件ねじはねつ造である
 1、本件ねじの測定値の重要な違い
 2、発見ねじのねつ造とねじのすり替え
 3、ねじに関する不自然な捜査
第2 検察官の平成25年12月25日付再審請求に対する意見書に対する反論
 1、「(1)『山平鑑定の不存在』に対する反論」について
 2、「(2)『本件ねじの不存在』に対する反論」について
第3 最後に

 簡単に内容を抜粋して紹介していくことにします。

●「第1の1」の内容(抜粋)
 「中島・本鑑定書〔8月21日付〕の対象ねじと吉村回答書〔8月26日付〕及び吉村鑑定書〔9月13日付〕の対象ねじの測定値が、2ないし3点に渡って重ならないということは、双方のねじが別物であることを意味している」。

●「第1の2」の内容(抜粋)
 「吉村回答書には道警本部持参品に『ドライバキズあり』と明示され、また、吉村鑑定書ではさらに詳しく『資料ねじのドライバー溝にはねじしめされる際のドライバーキズがついている』と記載されている」。「ところが、中島・本鑑定書にはこの重要な事実〔ドライバーキズ〕が記載されていない。これは、中島・本鑑定書の対象となったねじにはキズがついていなかったことを強く推定させるものである」。

 「布団袋から発見されたというねじは捜査側によるねつ造である。最初にねつ造されたねじは『新品のねじ』(吉村代59回尋問での検察官の質問中の用語)であった。中島・本鑑定書の対象となったねじはこの『新品ネジ』である。/ところが、8月26日に鶴原が吉村に示して回答を求めたねじには『ドライバキズ』があり、吉村鑑定書の対象となったねじも同様である。これは『どこかで使ったねじ』(吉村第59回尋問での検察官の質問中の用語)にするために、(・・・)キズありねじにすりかえたものである」。

●「第1の3」の内容(抜粋)
 「中島(そして捜査本部)は、事件後間もなく、現場遺留物の時計がリズム時計工業株式会社製造のシチズンコンパクトアラームツーリスト024であることと事件の時限装置にリン止めねじが使われていないことを突き止め、使われなかったリン止めねじの規格等についてデータを得ていたのである。/このような状態の下で請求人の布団袋からねじが『発見』された。そして、8月13日に鑑定嘱託され、発見ねじは『リズム時計工業KK製シチズン・トラベルウォッチ各機種リン止めネジと一致する』(中島・本鑑定)とされたのである。

 (2)ところが、鶴原正規は西川警部から『このねじが何に使われるねじかということを捜査するのが我々の使命だ』と指示され、西川、谷内と共に8月15日に徳永時計店に赴くのである」。

 「捜査本部としては、これは〔発見ねじ〕リズム時計工業KKシチズン・トラベルウォッチ各機種のリン止めねじではないかと考えて、直ちに、その捜査をするべきである。徳永時計店への聞き込みから始めるというのはあまりにも不自然である。/何のために徳永時計店への聞き込みから始めたのか。発見ねじが何に使われるねじなのか捜査本部は全く知らなかったと装うためである。何故、装ったのか。発見ねじは捜査本部によるねつ造であったからに他ならない」。 

●「第3」の内容(抜粋)
 「山平鑑定による請求人が除草剤を所持していたとの推認と本件ねじが請求人の布団袋から発見されたとの『事実』は、請求人と本件爆発物とを結びつける原審(1審及び控訴審)の事実認定の核心部分である。/しかし、山平鑑定の不存在は既に主張立証されている。(・・・・)

 また、請求人の布団袋から発見されたというねじ(中島・本鑑定の対象ねじ)と本件ねじ(吉村鑑定の対象ねじ)の同一性についても疑いが生じている。請求人の布団袋から発見されたというねじは捜査官によるねつ造であるところ、これが工作に使用された痕跡がないねじであったため、敢えてこれを本件ねじ(工作に使用された痕跡であるというきずのあるねじ)にすりかえたのである。

 原審の事実認定の中核ともいえる最重要の二点の証拠について、重大なほころびが生じている。

 裁判所におかれては、本再審請求について拙速な判断を下してはならない。慎重に事実審理を尽くして再審開始決定を出すべきである」。― 以上が補充書(三)の簡単な内容紹介です。

●発見ねじのすり替えについて
 次に書くことは補充書(三)では言及していません。77回コラムで述べたように、実質的な捜査指揮官である石原警視は「発見ねじ」をねつ造させました。しかし石原警視はその後(中島・本鑑定書作成の後になります)、ねじにはドライバー傷がついていなくてはならないことに気づきます。彼はどうしたでしょう。ネジにドライバー傷を付けるには、ねじをリン柱にさし込んでドライバーで絞めつけないと傷はできません。この秘密工作を捜査本部内で行うことは、他の捜査員の目がありますから不可能です。唯一可能な方法は、自宅かホテルでこの方法で別のリン止めネジに傷をつけて、そのねじを隠して捜査本部に持ち込んで「発見ねじ」とすり替えることです。

 だから、8月21日付中島・本鑑定書の対象ねじ(傷のない「発見ねじ」)と8月26日付吉村回答書及び9月13日付吉村鑑定書の対象ねじ(傷がある)は別のねじですから、測定値が重ならないことになっているわけです。

2016年1月1日記
大森勝久
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