●「発見リン止めネジ」の写真は実物ではなくコピー写真に差し替えられていました
1976年8月10日、里幸夫警部をトップとする7人の捜査員は私の元居室の家宅捜索と差押えを行いました。私は同日午後1時過ぎに、大家さんに見送られて苫小牧へ向って出発しています。そして苫小牧フェリーターミナル待合室において、3時21分に逮捕されたのでした。
元居室の捜索と差押えメンバーの1人の佐藤修一巡査は、写真撮影を担当しました。彼は白黒用とカラー用の2台のカメラを持って、50枚ほどの白黒写真と18枚のカラー写真を撮っています。白黒写真の中から35枚を里警部が選んで、里幸夫名義の8月10日付の「検証差押え調書」(出来上がったのは翌11日)に添付しています。白黒写真には「発見ネジ」は写っていません。
カラー写真は当時、現像は道警では出来なくて民間会社に発注しました。当時は大分時間がかかりました。18枚のカラー写真のうち2枚は失敗で、残り16枚の中から里警部が14枚を選び、佐藤修一氏が8月28日付け「写真撮影報告書」(1審で証拠採用)を作成しました。全14枚で全てカラー写真です。その中のbWと9の写真が布団袋の中から「発見」されたという(里警部が外部から持ち込んで「発見」を捏造した)「リン止めネジ」の写真です。
第2次再審を請求するに際して、弁護団は札幌地検が保管している証拠を閲覧したのですが、8月28日付けの佐藤氏の「写真撮影報告書」もチェックしました。その時に、12枚のカラー写真は実物でしたが、bWとbXの発見リン止めネジの2枚の写真はコピー写真であることに気付きました。私はそれを聞いて、「ドライバー痕」の有無が判然としないようにするための工作だと直感しました。
●8月28日付け「写真撮影報告書」のネガフィルムも処分されてしまって存在していませんでした
弁護団は昨年の2月6日、裁判所に対して、未開示証拠の開示命令を検察官に対して出すよう要請しました。その中には、「リン止めネジ発見」に係る里幸夫の「検証差押え調書」および佐藤修一の「写真撮影報告書」の添付写真のネガフィルムやその他の写真のネガフィルムも含まれていました。
検察官は裁判所の開示勧告(11月13日)を受けて、それらを開示すると回答しました(2014年12月16日)。2015年1月16日に布団袋が開示され、弁護団は写真に撮りました。また開示された調書類はコピーをしました。3月5日には、開示された写真のネガフィルムのスキャン作業を行いました。その時、弁護団は、佐藤修一の「写真撮影報告書」のネガフィルムがないことがわかったため、検察官と裁判官に、「一部不足があるので、再度の確認・開示を要請する」という「要請書」(3月30日付け)を出したのでした。その前に電話にて検察官に要請。検察官から3月31日付けの回答書が届き、「そのネガフィルムは存在していなかった」と書かれてあったのです。
佐藤修一氏はbWとbXの「発見リン止めネジ」のカラー写真も実物のものを使用して、「写真撮影報告書」(8月28日付け)を作成したのですが、その後、bWとbXの2枚をコピー写真に差し替えて、検察庁へ送った人物がいるということです。その人物は、「ドライバー傷の付いていないリン止めネジではヤバイ」と気付いて、傷のついた別のネジにスリ替えた幹部ということになります。石原警視です。コピー写真に差し替えれば、やや不鮮明になり、ネジのドライバー溝のドライバー傷の有無が判然としなくなるからです。
佐藤氏は1審46回公判で、「写真撮影報告書」のネガフィルムは爆弾捜査本部の庶務課に保管されていると証言していました (31頁) 。石原警視は念を入れて、「写真撮影報告書」の全てのネガフィルムも処分してしまったということになります。「写真撮影報告書」以外の他の写真のネガフィルムは今回ちゃんと開示されているのです。
今回開示された8月21日付けの中島富士夫雄氏の「鑑定書」(発見ネジの精密測定をした)には、ドライバー傷について一切書かれていないこと、氏は48回証言でもドライバー傷について、無いという意味の証言をしていたことと合わせて考えれば、石原警視が「bW、bXに実物写真を使えば、ドライバー傷が付いてないじゃないかと気付かれてしまうかもしれず、そうなると傷のあるリン止めネジ(これが766番の「発見ネジ」になっている)にスリ替えたことがバレてしまう。そうすれば、「発見」自体が捏造だと分かってしまう」と考えて、コピー写真に差し替えて、さらに念を入れてネガフィルムも処分してしまったという結論が導き出されます。
2015年4月5日記
大森勝久
【お詫びと訂正】
私は本コラムで、8月28日付け佐藤氏の「写真撮影報告書」のbWとbXの写真はコピー写真に差し替えられていたと書きましたが、そうではありませんでした。弁護人と私との連絡がうまくいかず、間違ってしまったのでした。ちゃんと現物写真が添付されています。お詫びして訂正いたします。
2015年7月6日記
大森勝久
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