第58回 検察官はまだ8月21日付中島鑑定書を開示しません |
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●2月6日付「証拠開示命令申立書」について
弁護人は去る2月6日、札幌地裁に「証拠開示命令申立書」を提出しました。裁判所に対して、検察官に対して証拠開示を命ずるように申し立てたものです。
私たちは開示を求める証拠として、次を挙げました。
(1)本件ネジ発見状況に関する捜索差押、実況見分および検証時に撮影された全ての写真およびネガフィルム。
(2)8月21日付中島富士雄・本実作成の鑑定書およびこれまで未開示であった(1)の写真以外の本件ネジに関する検証調書、鑑定書、捜査報告書、写真撮影報告書、供述調書その他関連する書類および添付の写真、ネガフィルムを含む資料全て。
(3)布団袋およびこれに関する未開示の写真撮影報告書、検証調書、鑑定書供述調書その他関連する書類および添付の写真、資料全て。
(4)送致目録(証拠ではありませんが)の開示も求めました。送致目録とは、警察が検察庁へ送った証拠の目録のことです。
他にも開示を求めた証拠はありますが、判りづらいでしょうから省略しました。
(2)の8月21日付中島・本実鑑定書(これまで単に中島鑑定書と書いてきたものです)は、その存在が明白になっているものであり、検察官は開示しなければなりません。拒むならば、裁判所は刑事訴訟法316条の26に基づいて、検察官に対して開示命令を出さなくてはなりません。
2004年の刑事訴訟法改正によって、公判前整理手続き等における「証拠開示制度(類型証拠開示、主張関連証拠開示)」が、新たに設けられました。この「証拠開示制度」について、元東京高裁裁判官の門野博氏は、それが「再審請求事件」にも及ぶことを明確に論じています。以下に引用します。
「再審事件(ここでは、犯人性が争われ、請求人が提出した新証拠の明白性が問題になっているようなケースを想定している)においても、もし、その事件において、公判審理の段階で今回の新法による公判前整理手続きが行われ、証拠開示が行われていたとすれば開示されたであろう証拠については、証拠開示がなされてしかるべきであろう」。「元来、類型証拠、主張関連証拠として開示が認められたような証拠については、再審手続きにおいても、その開示を認める方向で検討すべきものと思われる。そのような証拠について証拠開示が求められれば、検察官は積極的に対応すべきであり、裁判所としても、同様の方向で、当事者間の調整に当たるべきものと考える」(弁護人の「証拠開示命令申立書」より)。
●まだ検察官の「意見書」は出されていません
裁判所は検察官に対して、前記「申立書」に対する意見を求めたはずですが、検察官からの「意見書」はまだ提出されていません。検察官は大いに頭を悩ませていることでしょう。
8月21日付中島鑑定書が開示されれば、8月10日に布団袋の中で「発見」されたというリン止めネジは、ドライバー溝部分に、目立つドライバー痕は付いていなかったことが明らかになります。しかし、証拠になっているネジは、ドライバー溝にドライバーで付いたはっきりした傷が3ヶ付いているのですから、警察が後日、ネジをスリ替えたか、ドライバー溝に傷を付けたことが明らかになります。
本当に布団袋の中から発見されていたら、こんな証拠の偽造は絶対にしないわけですから。「発見」そのものが捏造であったことが証明されるのです。
2014年6月12日記
大森勝久
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